投稿日:2006-11-15 Wed
【ただ今のBGM】「冬の旅」より(シューベルト)
ボストリッジ(テノール)アンスネス(ピアノ)
平日に時間ができるようになりまして、いつ以来だか覚えてないくらい久々に、「平日コンサート体験」してきました~。
イアン・ボストリッジ テノール・リサイタル
ピアノ:ジュリアス・ドレイク
東京オペラシティコンサートホール
曲目:
シューベルト「冬の旅」より12曲
ブリテン「冬の言葉」(全8曲)
アンコール(3曲)
シューベルト:月の寄せて
野バラ
別れ
ボストリッジは、
「テノールぅ??自分、オペラっぽい歌い方ニガテなんだよね。だからクラシックは器楽しか聴かない。歌聴くなら、ロック&ポップでしょ!」
って思っている方(ここの読者層には結構多いのではないかと想像)に「こそ」聴いてほしい人です。
正しくはこの人、オペラはあんまりやらなくて「リート」という歌唱モノを中心にやってる人なんですね。
彼の端正でちょっと神経質そうなルックスは世の腐女子もとい婦女子(最近これ多いな)を虜にし、さらにそのリリックな歌声は、ルックスだけなら反感をも持ちかねない野郎どもをさえ、すっかり魅了してしまいます。
チラシには「卓越した感受性が織り成す 耽美なテノールの世界」だなんて書いてありますが、ほんと、これがまさにそんな感じ。「そのとーり!」と、どっかの昔の芸人っぽく(誰?)太鼓判押してあげたい感じでした。
聴いてる間、完全に彼岸まで連れてかれちゃいましたね。
そんな音楽家はどの楽器、歌を合わせたって、そうそういるもんじゃない。稀有な天才の営みに今自分は立ち会えてるんだな、なんてことを演奏中に思いました。
普段、クラシックの歌モノを聴きに行くことなんてまるでない自分は、正直に言いますと、途中で睡魔に恐れてウトウト・・・zzzというのを少し心配していたんですが、すっかり没頭というかノックアウトというか、入り込んでしまいまして、そんな危惧はまったく無用でしたよ。
ちなみに休憩中にロビーで見かけた、日本でおそらく一番有名な(?)音楽評論家某U先生、超ゴキゴンな顔付きでお仲間と談笑してましたよ。きっとどこぞの雑誌か著作上でボストリッジのこと書くでしょうね(たぶん既に何度も書いてるでしょうけど)。
ボストリッジの歌、それは、わかる人しかわかんない表現で言えば、
「完成版・望月豪」
みたいな。
楷書か行書か草書か、で言ったら、超草書でしょう。
望月君もよく、「演奏中は五線譜の拍とかそういうのはほとんど意識してない」と言ってますが、ボストリッジもインタビューでこう言っています。
「シラブル(音節)に気を使うよりも、スタイルや表現方法に心を砕くほうが重要だと思います。」
と。
そして、この人、毎日、まるで違う解釈を取るのだそう。即興の人なんですね。
その日その時に感じたことをそのまま音にしようとする。
あーこれもかなり望月君っぽい(いい意味でですよ、もちろん)。
こういう行き方は往々にして伴奏者泣かせなもので、リベルテではある伴奏者T氏(32歳・独身)は涙目だったというリットン調査団報告もありますが、このピアノ伴奏者ドレイク氏、すげーです。完全にボストリッジと一体化してるんじゃねえか?ってくらいピッタリ付けてました。
よく、優秀な音楽家は自分が今そのとき演奏している部分の少し先の展開・テンポ感を予測して入るといいますが、まさにそれが超高度な水準でできている感じがしました。
しかし、シューベルトの「冬の旅」、いいですなー。
真冬に失恋した男が悲嘆に暮れ、嘆き、そのうちそれが死への憧れへと転化していくという内容の歌曲なので、完全に内向きも内向きベクトルの音楽なんですけど、「祭り」が一段落し、結構ひそやかな冬を迎えつつある自分なんかには、結構しんみり響くものがあります。
まあとにかく、ボストリッジ、ヨーロッパでいま、最もチケットを入手しにくい歌手だそうですけど、幸か不幸か、日本では「リート」なるジャンルはまだまだ未知の領域のようで、今日のオペラシティも、客の入りはせいぜい7割って所でしたから、チケットはまだある筈!
しかも、今回は「水戸室内管弦楽団」との競演では、現在世界最高のホルン奏者にして、50年以上前に大活躍した伝説のホルン吹き「デニス・ブレイン」の再来とも言われるベルリンフィル首席ホルン奏者バボラック氏が来るようです!
「世界で一番美しいテノール」と「世界で一番うまいホルン」が一同に会する貴重な演奏会、これから水戸・鎌倉・福岡で行われるようですので、お近くの方は行ってみる価値ありですよ~!
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